オーケストラのトランペットって?
全国のトランペット吹きの皆さん、こんにちは。
皆さんはオーケストラの曲を吹いたことがあるでしょうか?
と言われても、ピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。
吹奏楽部に入っている方、もしくは経験者の方なら、オーケストラ曲の吹奏楽アレンジ版を1曲くらいは吹いたことがあるのではないでしょうか。
有名どころとしては、レスピーギの「ローマ3部作」、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」、オルフの「カルミナ・ブラーナ」などが挙げられます。
私も高校時代に、吹奏楽部でチャイコフスキーの「幻想序曲ロメオとジュリエット」を演奏したことがあって、
「なんてかっこいい曲なんだ!!」
と感動しました(曲は難しくて全然吹けませんでしたが)。
それがきっかけで「いつかオーケストラでトランペットを吹きたい!」と思うようになり、
進学した大学の学生オーケストラの門を叩いたというわけなのです。
ところで、上に挙げたオーケストラ曲は、いずれも「管弦楽曲」と呼ばれます。
だいたい10分~20分くらいの長さの1楽章構成で、覚えやすいタイトルがついているのが特徴ですね。
吹奏楽にアレンジされるオーケストラ曲の多くは、こうした管弦楽曲です。
これに対して、オーケストラの演奏会でメインとなるのは、多くの場合「交響曲」です。
ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」などが有名ですね。
交響曲は複数の楽章で構成され、通して演奏すると短くても25分~30分、長いものでは1時間を超えることもある大規模な楽曲です。
オーケストラの真骨頂はこの交響曲なのですが、吹奏楽で本格的に交響曲を演奏する機会はあまりないのではないでしょうか。
ここでは、オーケストラのトランペットがどんなものなのかということについてお話ししていきます。
オーケストラに入ってみたいという方、オーケストラの曲にに興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
「てやんでい! オイラは吹奏楽一筋なんでい!」
という方(誰?)も、参考までにご一読いただけたら嬉しい限りです。
オーケストラのトランペットはこんな音!
前置きが長くなってしまいましたが、百聞は一見に如かず。
まずは次の動画をご覧ください。
ドヴォルザーク作曲 交響曲第8番 ト長調 作品88
演奏:hr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)
指揮:アンドレス・オロスコ=エストラーダ
※再生ボタンを押すと第4楽章冒頭から始まります。
交響曲の中でもトランペットが「オイシイ」曲の一つです。
第4楽章冒頭のファンファーレが何と言っても印象的ですが、第1楽章中間部でテーマを奏でる部分(上の動画で7:05あたりから)も非常にカッコイイです。
私も学生オーケストラでこの曲の第1トランペットを担当したことがあり、本番では非常にテンションが上がりました。
一聴しただけでは、吹奏楽のトランペットとのサウンドの違いはあまり感じられないと思います。
でも意識してよく聴いてみると、吹奏楽のトランペットを日々聴いている方には、何となくその音色の違いがわかってくるのではないでしょうか。
音を言葉で説明するのは大変難しいのですが、
オーケストラのトランペットでは、「鳴り」が重視される傾向があります。
音色はやや「硬め」で、「広がる」よりも「突き抜けてくる」ように感じられます。
実際には奏者によって音色が違うのはもちろん、楽団や指揮者によっても求められるサウンドは変わってくるので一概には言えません。
オーケストラのトランペットの特徴
さて、実際に演奏する上での吹奏楽とオーケストラのトランペットの違いをまとめてみます。
特徴①:音符が少ない
特徴②:人数が少ない
特徴③:リズムの刻みが多い
特徴④:目立つときは目立つ!
特徴①:音符が少ない
オーケストラに入ってトランペットの楽譜を渡されたとき、まず驚くのが「音符の少なさ」だと思います。
本当に、吹くところが少ない。
曲のフィナーレなどの盛り上がる部分では重要な役割があるのですが、
それ以外は休符だらけ。はっきり言って、楽譜はスカスカです。
4楽章構成の曲で「2楽章と3楽章が全く出番なし」なんてこともザラにあります。
このように書くと「やった! 楽でいいじゃん!」と思われるかもしれません。
しかし、出番が少ないということは、逆に言えば「休みが長い」ということ。
数十小節の長休符なんて当たり前に出てきます。
ということは、休みが終わった後に入るタイミングをしっかり掴まなければいけないわけです。慣れるまでは、これが結構大変です。
休みの数え方・入り方のコツは別の記事で書いていますので、よろしければそちらもどうぞ。
また、オーケストラのトランペットの楽譜はちょっと特殊で、一般的なトランペットの音階(B♭)とは異なる調で書かれていることがほとんどです。
このため、楽譜上の調に応じて音符を読み替えて演奏する「移調読み」というテクニックが必要になります。
この「移調読み」についても、別記事で詳しくご紹介しています。
特徴②:人数が少ない
トランペットに限らず、吹奏楽では演奏者の人数は割とアバウトなことが多いです。
楽譜で指定されたパート数が3(ファーストからサード)だったとしても、4人で吹いたり、人数の多い団体では倍の人数で吹いたりすることもあるかと思います。
定期演奏会ではコンクールと違って人数制限がありませんから、ステージがいっぱいになるくらいの大人数で演奏することもありますよね。
一方オーケストラの管楽器は、楽譜で指定された人数を忠実に守ります。
その人数を想定したバランスで楽曲が作られていますから、当然といえば当然ですね。
トランペットの場合は2管、つまり「2人」という指定の曲が多いです。
一つの曲で2人しかステージに乗れないのですから、大変狭き門といえます。
また同時に、一人一人の責任が非常に重いということでもあります。
何しろトランペットが2人しかいないのですから、曲中の大事な部分で入りそびれたり間違えたりしたら、もう大変。
ちなみに、オーケストラ曲ではトランペットのユニゾン(同じフレーズを2人で吹くこと)はほとんどありません。
旋律を吹くときはセカンドはオクターブ下を吹くことが多いので、ファーストはほとんどソロ状態です。
大規模な曲ではトランペットが4人ということもありますが、それぞれが全く別の動きをすることも多く、負担が軽くなるということはありません。
特徴③:リズムの刻みが多い
以前にご紹介したように、吹奏楽ではトランペットは花形の一つです。
しかし、ひとたび交響曲の世界へ足を踏み入れると、立場は一変。
トランペットは「地味な脇役」になってしまうのです。
主旋律(メインメロディ)を吹く機会なんて、本当に少なくなります。
特に、モーツァルトなどの古い時代の楽曲では、リズムの刻みに徹することがほとんど。
ロマン派以降の楽曲では主旋律を担当する部分も増えてきますが、弦楽器や木管楽器が主旋律を奏でる部分では「刻み」が多いです。
同じ音で、八分音符や十六分音符を刻み続ける……という、職人気質が求められます。
特徴④:目立つときは目立つ!
ここまで読んでくださったトランペット吹きの方は、きっとガッカリされたことでしょう。
でも、ご安心ください。
トランペットの強みは、他の楽器には真似のできない煌びやかなサウンド。
そうした特徴を遺憾なく発揮させてくれる楽曲も、たくさんあります。
上の方で挙げたドヴォルザークの交響曲第8番もその一つですね。
ドヴォルザークの交響曲といえば第9番がもっとも有名ですが、第4楽章のあの印象的な旋律も、トランペットが吹いてこそ盛り上がるというものです。
傾向として、時代が新しくなるほどトランペットが表に出る曲が多くなります。
チャイコフスキーやマーラー、ショスタコーヴィチなどの交響曲は、出番が多すぎてむしろお腹いっぱいになるくらいです。
チャイコフスキー作曲 交響曲第5番 ホ短調 作品64
演奏:hr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)
指揮:マンフレート・ホーネック
※再生ボタンを押すと第4楽章終盤から始まります。
また、交響曲では出番の少ないトランペットですが、管弦楽曲では大活躍するチャンスがしばしば巡ってきます。
コンサートのオープニングでは、派手な管弦楽曲が取り入れられやすいので、むしろそちらの方がトランぺッターの本領発揮の場と言えるかもしれません。
オーケストラのトランペットが向いている人!
ここまで、主に交響曲でのトランペットの扱われ方についてお話ししてきました。
同じ楽器であっても、吹奏楽とは役割がだいぶ違ってくるということがわかっていただけたのではないかと思います。
最後に、オーケストラのトランペットがぴったりだと思えるタイプについてまとめてみました。
・オーケストラのサウンドが好きな人
・一つの楽曲にしっかりと向き合いたい人
・ここぞというところで目立ちたい人
「思ってたのと違う!」という方もいらっしゃるかもしれませんが、「やってみたい!」と思った方は、お近くで活動しているオーケストラにぜひ見学に行ってみてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
今回の私の話が、皆さんのトランペットライフに少しでも役立てば嬉しいです!