「練習した分だけ上手くなる」って本当?
今日も楽器練習に励んでいる皆さん、こんにちは。
突然ですが、楽器の上達のために、一番必要なものは何でしょうか?
こう問われれば、プロアマ問わず多くの人が「練習」と答えるでしょう。
もちろん、楽器に限らず、絵画でも演劇でもスポーツでも、
練習しなければ上手くならないというのは当たり前のことのように思えます。
では、「たくさん練習すれば、その分だけ上手くなる」のでしょうか。
吹奏楽のように多くの奏者と一緒に演奏する場合、
「もっと練習しなくては」という強迫観念に捉われてしまいがちです。
・本番前なのに、どうしても上手く吹けない箇所がある
・先生や先輩からプレッシャーをかけられる
・「自分が上手くないせいで、皆の足を引っ張っている」と思い込む
こうしたことから「早く上手くなりたい」「早く苦手を克服したい」と
焦る気持ちばかりが強くなり、自分を無理に追い込んでしまう――
そんな状況に陥っている人はいないでしょうか。
楽器練習で必ずぶつかる「壁」
結論を言うと――あくまでも私の経験上ですが、「練習時間」と「上達度」は、必ずしも比例しません。
……こう言ってしまうと誤解を招きそうなので補足しますが、
「楽器の上達度は、正比例のグラフのように直線的には伸びていかない」
ということです。
ですから、決して「長時間練習しても無駄だ!」などと言いたいのではありません。
むしろ逆に、「あなたのそのがんばりは、決して無駄にはなりませんよ」と言いたいのです。
とはいえ、短期的に見れば、練習時間と相まってみるみる上達するように感じられることもあるのは確かです。
特に、楽器を始めたばかりの頃は「練習すればするほど上手くなっていく自分」を容易に実感できるため、それが自然とやる気につながっていく、という好循環に恵まれます。
しかし、そういう時期には、いつか必ず終わりが来ます。
「いくら練習しても上手くなれない――」
そんな風に落ち込んでしまう時が、間違いなくやってきます。
上達のきっかけは突然に
でも、決して諦めてはいけません。
ふとしたきっかけで、徒労に思えていた練習が、無駄ではなかったと思える時が来るのです。
私自身の話をします。
高校2年生の夏ごろ、いくらトランペットを練習しても一向に上達しない時期を過ごしていました。
折しも、もうすぐ吹奏楽コンクールの県大会を迎えるという時期。
後輩の1年生がコンクールのメンバーに選ばれ、私の出番はなし。
その後輩は中学生の時もトランペットを吹いていた経験者だったので、
中学時代に楽器から離れていた自分がメンバーになれなくても「仕方ない」と思っていました。
そう割り切っていたつもりが、やっぱり心のどこかではやるせない思いがあったのでしょう。
気が付けば、いつもの練習場所である講堂で、誰もいない客席から、誰もいないステージに向かって、トランペットを吹き鳴らしていました。
曲は、小学校時代にマーチングで演奏した曲。
聞くのも嫌になるくらい練習した曲なので、高校2年生になってもすらすらと暗譜で吹くことができました。
指も、唇も、呼吸器官も、体全体が自然に「音を奏でる」ことに集中している状態。
それはまるで、無人のコンサートホールで一人、誰にも気兼ねすることなく大声で歌っているような心地でした。
その時。
「キミ、実はめっちゃ上手いじゃん!」
背後から飛んできた女性の声に、心底びっくりして演奏を止めてしまいました。
小学生に戻った気持ちで無心に楽器を吹いていた私は、
背後でこっそり聴いていた先輩の気配に全く気が付かなかったのです。
そして、その一言で思い知らされました。
今まで技術的なこと、楽譜通りに吹くことばかりに気を取られ、小学生の時にはいつも感じていたはずの「楽器を吹くこと自体の心地よさ」を、すっかり忘れてしまっていたことを。
その日から、私は自分の音に俄然自信を持つことができるようになりました。
きっかけとなったのは先輩の一言でしたが、それまでの練習がしっかりとベースになって、自分の音を支えてくれたことも大きいのではないかと考えています。
さすがにそんな鮮烈な体験はそう何度もあるものではないですが、
その後も何度も壁にぶち当たっては、何でもないようなきっかけで光明を見出す、ということを繰り返しながら、今日までトランペットを続けてきたように思います。
余談が長くなってしまいました。
話を戻しますと、長い間楽器をやっていれば、
「どんなに練習をがんばっても、ちっとも上手になれない!」
と思う時期が、必ずといっていいほどやってきます。
そういう時でも、積み重ねた練習は、決してムダになっているわけではありません。
ちょっとしたきっかけで、自分の演奏が劇的に変わることがあるのです。
その時まで、決してあきらめないでください。
ただし、その時に一つだけ、やってはいけないことがあります。
伸び悩んでも、焦りは禁物!
練習が思うように結果につながらない時、絶対にやってはいけないこと。
それは、「いつもより長時間練習すること」です。
なかなか上手に曲が吹けない時は、誰もが焦ります。
本番の日が近づいてくれば、まずますじっとしてはいられないでしょう。
「もっと練習しなきゃ!」と思う気持ちは、とてもよくわかります。
でも、焦って練習時間を増やしてはいけません。
むしろ、休んだ方がいいくらいです。
その代わり、反復練習以外の、いろいろなことに目を向けてみてください。
吹いている時の姿勢、基礎練習メニュー、体や唇にムダな力が入っていないかどうか。
今取り組んでいる楽曲の参考音源や、他の人の演奏を聴いてみるのもいいです。
先生や先輩に自分の演奏を聴いてもらい、アドバイスしてもらってもいいかもしれません。
つまり、無理に練習時間を増やすよりも、飛躍するきっかけを掴むために、アンテナを広げてみるのです。
今の楽曲とは関係ないところ、下手をすると音楽とさえ無関係な事柄が、意外なきっかけになるかもしれません。
あとは、ゆっくりと休むことです。
休むことは、練習と同じくらい大事だと思ってください。
休憩・休息の大切さは、別の記事で書いています。
・あきらめない!
・無理をしない!
・疲れたら休む !
この3つを心がけていれば、いつか必ず、がんばった日々が報われるはずです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
今回の私の話が、皆さんの音楽人生に少しでも役立てば嬉しいです!