楽器の上達に焦りは禁物!
煌びやかな音色、突き抜けるようなハイトーン、鮮やかなテクニック――
トランペット吹きなら、誰もが憧れる理想の姿です。
「自分も、あんなふうに吹いてみたい! もっともっと練習しないと!」
そうやって焦りに焦り、練習に打ち込む青春まっしぐらのトランぺッターたちに、
頼んでもいないのに一方的に贈られてくる言葉の数々――
「継続は力なり」
「石の上にも三年」
「塵も積もれば山となる」……
これ見よがしに金言至言を突き付けられると、
「言われなくても、それくらい知ってるわ! こちとら今すぐ上手くなりたいんじゃ!」
と反抗したくなるのが人間の性ですが、やはり焦りは禁物です。
休憩は練習と同じくらい大事!
スポーツでもそうですが、楽器の練習を長時間すると、疲れます。
しかし、
「毎日長時間練習をしないと、上手くなれない!」
などという強迫観念に駆られて、ろくに休憩もしないで練習を続けると、
上達どころか、その後の演奏に悪影響が及ぶことになってしまいます。
せっかくそれまで積み上げてきた練習の成果が、全部パーになってしまうことだってあり得るのです。
ここからはトランペットを例に挙げて、練習における休息の大切さを、
私自身の経験も踏まえてお話していきます。
休憩なしでの練習はこんなに危険!
①疲れが残る
②練習効率の低下
③崩れたフォームが身に付いてしまう
デメリット①:疲れが残る
「よーし、今日は練習頑張るぞ!」
気分の良い日は、やる気に満ち溢れています。
逆に嫌なことがあった日は、うっぷん晴らしも兼ねて練習に打ち込もうという気になることもあるでしょう。
悪いことではありません。
やる気があるのは、もちろん良いことです。
が、大切なのは「続けていくこと」。
その日くたくたになるまで練習してしまうと、
翌日以降にまでその疲れが残ります。
1日だけ限界まで練習に打ち込んでも、
その日のうちに燃え尽きて次の日から練習できなくなってしまっては、本末転倒です。
デメリット②:練習効率の低下
①に関連しますが、疲れてくるにつれて万全な状態からどんどん遠ざかっていきます。
そんな状態で練習を続けても、ほとんど意味はありません。
例えば、楽譜の初めの方から8小節ずつを反復練習するとします。
最初の8小節を繰り返し吹き、上手く吹けるようになったら次の8小節へ。
ということを繰り返せば、曲の終わりまで吹けるようになるわけです。
ところが、疲れがたまってくるとミスをする確率は増えますから、
どれだけ練習を繰り返しても吹けるようにはならず、一向に前には進みません。
むしろ、吹けば吹くほど効率は落ちていくばかり。
増えていくのは、「いつになったら、吹けるようになるんだろう」という焦りだけです。
デメリット③:崩れたフォームが身に付いてしまう
実のところ、これが一番恐ろしいです。
トランペットは、唇の正しい形と正しい使い方が非常に大事な楽器です。
最初は正しいフォームで吹いていても、疲労がたまると崩れてきます。
それは、唇の疲れて動かなくなった部分を何とか動かそうとして、無意識のうちに口の形を変えてしまうからです。
そうやって何とか高い音を出し続けられるようになったとしても、
正しいフォームではなくなっていますから、当然音色は悪くなりますし、力の入れ方も無理なものになって、ますます疲労が蓄積していきます。
そんな状態でなおも練習を続けると、その崩れたフォームが定着してしまうのです。
中高生を含めたトランペット吹きの多くが、
「高い音が出ない」「すぐに疲れる」という悩みを抱えています。
その大きな原因の一つが、このようにして崩れたフォームが定着してしまっていることではないかと考えています。
休憩はどれくらいとればいい?
理想は、「疲れを感じたらすぐに休む」ことです。
唇の疲労が残った状態で音を出すのは、全くメリットがありません。
リズムやテンポのキープも難しくなります。
フィンガリング(指の動き)の練習にはなるかもしれませんが、良い音が出せなければ、いくらフィンガリングが上手くなっても無意味です。
疲れたら、無理せずにすぐ休みましょう。
楽器を手にしていると、どうしても音を出したくなるものですが、そこは我慢。
少なくとも10分間は全く音を出さずに休憩してください。
その際、マウスピースに口を付けずに、ぶるぶると唇を震わせるとリフレッシュさせることができます。
十分休んで疲れを取り、万全の状態で練習を再開しましょう。
長期間の「休息」はOK?
私が高校生の頃によく聞いた言葉に、
「1日休めば唇は3日戻る」
というものがあります。
「正しいフォームを定着させるには、毎日継続することが必要だ」
ということを伝えるための例えだと思うのですが……
私は、当時からこの言葉を信じていませんでした。
私としては、
「1日くらいは、休んでも全然OK!」
と言いたいです。
むしろ、練習に熱を上げ過ぎて疲れたら、翌日は休まなければダメです。
理由は上にも書いた通り、「疲れたまま練習すれば、崩れたフォームが定着してしまう」からです。
個人的には1日と言わず、3日くらい休んでも全然平気だと思っています。
ただし、前提条件として、それ以外の日はきちんと継続して練習することです。
ちなみに、私が大学生の時、学生オーケストラを離れて3カ月ほど経った頃に、
「久々にトランペット吹いてみたいな」
とふと思い、後輩たちがいる練習部屋に行って吹いてみたところ――
音色自体は現役の頃とほとんど変わらない(と自分では思う)音が出ていましたが、休み休み吹いていたにも関わらず、30分も吹くとへばってしまいました。
明らかにスタミナは落ちていたのですね。
「やっぱり継続って大切なんだな」と実感した出来事でした。
休みながら、素敵な楽器ライフを
休息をとることの大切さは、トランペットに限ったことではありません。
適正な休憩時間は楽器によって差がありますが、無理して練習を続けても良いことはない、ということは共通しています。
大切なのは、続けること。
そして、楽器を、音楽を、楽しむことです。
記事の終わりに、私の尊敬する恩師の一人の言葉を。
「あまり頑張らないで、頑張ろう」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
今回の私の話が、皆さんのトランペットライフに少しでも役立てば嬉しいです!