「トランペット」と「ラッパ」は別物!?
普段、細かな意味の違いなどを意識せずに、何気なく使っている言葉ってありますよね。
「ラッパ」という言葉も、その一つではないでしょうか?
SNSでは多くの人が絵文字を使っています。
さて、この絵文字→🎺
何を表しているかお分かりでしょうか?
この絵文字の名前は「トランペット」です。
そのまんまといえば、そのまんまですよね。
一方で「え? これ『ラッパ』じゃないの??」と思った方も、多いのではないでしょうか。
なるほど、パッと見れば、いわゆる「ラッパ」の形をしていますよね。
「ラッパのマークの正○丸」の「ラッパのマーク」にそっくりです。
実は、「ラッパの絵文字」は別にあるのをご存じでしょうか?
それがこちらです→📯
「らっぱ」で変換すると出てくるのがこっちです。
この絵文字、正確には「郵便ラッパ」といいます。
郵便ラッパとは、その昔、郵便を運ぶ馬車などが合図として使っていたラッパのこと。
クラシック音楽に詳しい方には「ポストホルン」と言った方がピンとくるかもしれません。
モーツァルトの作曲したセレナードの一つに、同名のタイトルがついていますね。
「トランペット」と「ラッパ」。
似たようなモノだと思いがちですが、スマホやPCではそれぞれ違う絵文字として別に作られているのです。
それでは、「ラッパ」とはいったい何か?
「トランペット」とは何物なのか?
そして、実際にトランペットを吹いている人たちは、この2つの言葉をどのように使っているのか?
以上について、分かりやすくご紹介していきます!
「トランペット」とは?
それではまず、「トランペット」とはどんな楽器なのか、ご紹介します。
はい。コレですね。
皆さんも一度はどこかで目にしたことがあるのではないでしょうか。
トランペットは「金管楽器」に分類される楽器の一種。
他の金管楽器と同じく、吹き口(マウスピース)に息を吹き込み、唇の振動によって音を出す仕組みです。
楽器上部に「ピストン」が3つ付いており、これを押すことによって音の高さを変化させて音階や楽曲を奏でることができます。
トランペットにこのピストンという装置が付いたのは、実は19世紀になってからのこと。
初めの頃のトランペットは、吹き口と「ベル」と呼ばれる朝顔形の先端があるだけの、一本の長い管でした。
といっても、現在のトランペットも基本は同じで、長い管をぐるりと巻いたようなイメージなのです。
音色は煌びやかで華々しく、ファンファーレやマーチが良く似合います。
一方で、しっとりとした滑らかな音色も出すことができます。
このようにさまざまな演奏に対応できる楽器であるため、クラシックはもちろん、ジャズや映画音楽、野球応援、演歌などあらゆるジャンルで大活躍しています。
なお、トランペットについては他にもいくつか紹介記事を書いていますので、そちらも参照していただければ幸いです!
「ラッパ」とは?
それでは、「ラッパ」とはどういう意味の言葉なのでしょうか。
国語辞典などで調べてみると、「ラッパ」の意味は「金管楽器の総称」だと書いてあります。
先ほどご紹介したように、トランペットも「金管楽器」の一つですから、「ラッパ」は「トランペット」よりも広い意味を持つ言葉だということになります。
「トランペット」はいろいろとある「ラッパ」の中の一つ、ということですね。
したがって、「トランペット」のことを「ラッパ」と言うのは間違っていませんが、「ホルン」や「トロンボーン」など他にも「ラッパ」はあるわけですから、「ラッパ」のことを「トランペット」と言うと間違いになってしまいます。
さらに、オーケストラや吹奏楽で使われる楽器以外にも、「ラッパ」は存在します。
その例の一つが、冒頭にご紹介した「郵便ラッパ(ポストホルン)」ですね。
他に、昔の軍隊で使われた「軍隊ラッパ」や「信号ラッパ」などもあります。
これらは、合図として音を出すために使われていたもので、演奏するためのいわゆる「楽器」ではありません。
つまり、最初期のトランペットのように「吹き口」と「ベル」がある「息を吹き込んで音を出す管状の道具」全般のことが「ラッパ」と呼ばれているわけですね。
ラッパが合図や信号を送るために使われたのは、シンプルな仕組みで遠くまで音がよく通るためだったのでしょう。
形状も分かりやすいので、小さい子どものためのおもちゃとしてもよく売られていますよね。
「ラッパ」という言葉の語源についてはオランダ語、フランス語、中国語、サンスクリット語など諸説あり、ネット上でもいろいろな説が紹介されています。
ちなみに「忍者」を表す古い言葉の一つに「乱波(らっぱ)」というのがあるのですが……音を出す方の「ラッパ」との関連についてはよく分かりません。
トランペット…金管楽器の一つ。小型であり、3つのピストンで音の高さを変える。カッコいい。
ラッパ…金管楽器など「ラッパ状」の音を出すもの全般を指す呼び名。
実際の演奏者はどう呼んでいる?
さて、ここまではよくある「言葉の雑学」のお話。
ここからは当ブログらしく「実際に楽器を演奏する人」の視点をご紹介していきます。
というのも、オーケストラや吹奏楽部に所属している人で、「ラッパ」を「金管楽器の総称」という「辞書的な意味」で使っている人はほとんどいないと考えられるからです。
楽器をやっている人たちにとっては、「ラッパ=トランペット」なのです。
実際、私が学生オーケストラでトランペットを吹いていた頃、他の楽器の人たちは「トランペット」のことを「ラッパ」と呼んでいましたし、同じ金管楽器であるホルンやトロンボーン、チューバの人たちが「俺たちの楽器だってラッパだ!」と怒り出すこともありませんでした。
ただし、トランペットを吹いている本人たちに限っては、不思議と「ラッパ」とは言いませんでしたね。
なぜ、オーケストラや吹奏楽部の人たちは、国語辞典に反旗を翻して「トランペット」だけに「ラッパ」の称号を与えるようになったのでしょうか?
……まぁ、たぶんそこまで深い意味はなく、トランペットの形がいわゆる「ラッパ」のイメージに一番近いからなのでしょう。
ちなみに、私が高校生の時に所属していた吹奏楽部では、トランペットの略称としては「ペット」を使うことの方が多かったと記憶しています。
トランペット=ラッパ
楽器の名前に歴史あり
トランペットに限らず、楽器は略称で呼ばれることが多くあります。
ユーフォニアムは「ユーフォ」、クラリネットは「クラ」、コールアングレは「アングレ」などと呼ばれます。
「サックス」に至っては、略称の方が有名になってしまいましたね。
日常的に「サクソフォン」と呼ぶ人はまずいません。
そういえば、高校時代にトロンボーンを「ボントロ」と略していた先輩がいたなぁ……と思って調べてみたら、結構メジャーな略称なんですね。
知らなかった……
一つ注意していただきたいのが、こうした略称で呼ばれることは、その楽器を演奏している人にとって愉快ではないことが多いのです。
私自身、トランペットを「ラッパ」と言われても別に怒ったりはしませんが、嬉しいかと言われたら、ちょっと……という感じです。
一生懸命楽器練習に取り組んでいる人には、それなりの敬意をもって接していただけるとありがたいです!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
今回の私の話が、皆さんの毎日の生活の中でちょっとした潤いになれば嬉しいです!