大ピンチ!音が出ない!?
トランペットの練習に励んでいる皆さん、こんにちは!
最近、調子はどうでしょうか?
順調であれば、大変良いことです。
そのまま調子を維持して、無理せず、焦らず、少しずつレベルアップを図っていきしょうね。
でも、いつもいつも絶好調というわけにいかないのが楽器というもの。
特にトランペットの場合、いつものように吹こうとしたら「あれ? 音が出ない!?」なんてこともあり得ます。
ピアノやギターなどの場合、奏者のコンディションがどんなに悪くても「楽器を弾いても音が出ない」なんてことは絶対にありません。
もしピアノの鍵盤を押しても音が出なかったら、100%ピアノの不具合です。
しかし、金管楽器は奏者のコンディションによって思うように音が出なくなったり、全く音が出なくなってしまったりすることもあるのです。
トランペットはマウスピースが小さいということもあって、この「音が出ない」現象が出やすいような印象を受けます。
「全く音が出ない」とまではいかなくても、音がかすれたり、普段出せるはずの音域が出なかったり、ということは、トランペットを吹いたことがある方なら誰しも経験したことがあるのではないでしょうか。
コンクールや定期演奏会を間近に控えている時期にこんな調子になったら、青ざめてしまいますよね。
というわけで今回は、「突然調子が悪くなった」「最近スランプかも」と感じたときにどんなことをやるべきなのか、ということについてお話ししていきます。
ちなみに、「たくさん練習しているのになかなか上達しない」と悩んでいる方もいらっしゃることでしょう。
そういった場合の解決法については、別の記事で書いていますので、お悩みの方はぜひご覧ください。
スランプの時に絶対やってはダメこと!
さて、トランペットでスランプに陥った時にやるべきこと……の前に。
逆に絶対にやってはいけないことからお話しします。
それは、うまく音が出ないのに、無理矢理音を出そうとすることです。
例えば、いつもは余裕で出るはずの音域が、なかなか、または全く出ないという日があると思います。
こういう時は、唇にいつも以上に力を入れたり、マウスピースに強く押し付けたりして、無理にでも音を出そうとしがちです。
でも、これは絶対にやってはいけません。
唇に大きな力がかかった状態にすると、一時的に高い音は出るかもしれません。
しかし、それはあくまで一時的なもので、余計な力がかかった分だけ唇は余計に疲れ、バテるのが早くなります。
それだけならまだ良い方で、無理な吹き方を続ければアンブシュアが崩れますし、最悪の場合は唇を痛めて楽器自体が吹けなくなってしまうことも考えられます。
音が出にくくなると、不安に駆られて無理にでも音を出そうとしたくなる、その気持ちは分かります。
しかし、焦りは絶対に禁物。
無理をすればかえって調子を崩しますので、逸る気持ちをぜひ抑えるようにしてください。
調子が悪い時に無理矢理音を出そうとするのは絶対NG!
スランプの時にやるべき5つのこと!
では、思うように音が出ない時には、いったいどうすれば良いのでしょうか?
私は、これまでの経験上、次の5つのステップを踏んで取り組んでいくことが大切だと考えています。
①自分の状態をチェック
②アンブシュアのリセット
③低い音からウォームアップ
④基礎練習をメインに
⑤しっかり寝る!
①自分の状態をチェック
調子が悪いと感じた場合、まずやるべきことは、自分の状態をできるだけ客観的に把握することです。
この「客観的に」というのが重要。
漠然と「音が出にくい」「調子が悪い」というだけでは、どこをどう改善すれば調子が戻るのか分からないからです。
具体的には、鏡を見ながらトランペット(またはマウスピースのみ)で音を出してみて、アンブシュアの状態を観察します。
唇の右か左、どちらか一方にだけ力が入っていませんか?
唇の端から息が漏れてはいませんか?
音が出にくい場合は、アンブシュアが普段と違う状態になっていることが多いのです。
吹いている感覚だけではその違いが分かりませんので、鏡を見たり、他の人に観察してもらったりして、自分のアンブシュアを可能な限り客観的に掴むようにしてください。
また、こういう時のためにも、普段から鏡を見るなどして自分のアンブシュアがどうなっているかを把握しておくことが大切ですね。
②アンブシュアのリセット
次に、アンブシュアを通常の状態に近づけるようにリセットします。
リセットといっても、今まで作り上げてきたアンブシュアを崩して、ゼロから作り直すわけではありません。
あくまで、普段の形に戻すだけです。
アンブシュアをリセットするための一番良い方法は、1~2日楽器を全く吹かないでおくことです。
とはいっても、吹奏楽部の部員の皆さんは「調子が悪いから」という理由だけで練習を休むことはなかなかできないでしょう。
ですから、なるべく練習を短く切り上げ、マウスピースに唇が触れない時間をできるだけ長くして、唇を休ませてください。
翌日になったら、楽器を吹く前に、唇をマウスピースに軽くあてます(楽器を付けても付けなくてもOK)。
そして、その状態を保ったまま少しずつ息を吹き込んでいきます。
この時、決して音を出そうとしてはいけません。
あくまで、息を吹き込むだけです。
音が出なくても、決して焦らないでください。
何度かこれを続けているうちに、唇の両端に力がかかって、唇のセンター部分は逆に力が抜けてくるようになると思います。
①でアンブシュアをチェックした時に気づいた点があれば、ここで修正できるようにしましょう。
マウスピースだけで音を出す練習については、上田じん氏著「読むだけでトランペットがうまくなる本」で詳しく解説されています。
これで、アンブシュアのリセットは完了。
まだ、音が出なくても構いません。
次のステップに進みましょう。
③低い音からウォームアップ
アンブシュアがリセットできたら、今度はウォームアップをしていきます。
ウォームアップは人それぞれ異なった方法があると思いますので、ここでは具体的な方法は書きません。
ただ、一つだけ注意点。
それは、低い音から徐々に鳴らしていくことを心掛けてほしいということです。
チューニングB♭(ド)のオクターブ下のB♭(ド)、さらにその下を入念に鳴らすようにしてみてください。
低い音を鳴らしにくい方はB♭(ド)~F(ソ)でも構いませんが、なるべく低い音を鳴らすのが理想です。
ロングトーンでもスラーでも良いので、できるだけ軽く唇を押し当て、可能な限り小さい音で吹いてみてください。
トランペットを持つと、いきなり中高音域を吹きならしたく方もいらっしゃると思いますが、まだまだ焦りは禁物。
低い音が無理なく鳴らせるようになったら、徐々に徐々に音域を上げていってください。
④基礎練習をメインに
ウォームアップが済んだら、本格的な練習ですね。
休んだ分を取り戻すぞ!と息巻く方もいらっしゃると思いますが、ちょっとストップ。
調子の悪い時はできるだけ曲練習は控えた方が良いのです。
唇を休ませてアンブシュアをリセットした後は、ロングトーン、スケール(音階)、スラー、リップスラーなど、基礎練習をみっちりと行うようにしてください。
こうすることで、元に戻った本来のアンブシュアを定着させ、スランプに逆戻りするのを防ぐことができます。
唇に負荷がかからないよう、高音域には挑戦せずに低~中音域にとどめておきましょう。
この段階で難しい曲などにチャレンジしてしまうと、せっかく戻ったアンブシュアがまた崩れてしまいますので、要注意です。
部活でパート練習や合奏などもあると思いますが、できるだけ無理はしないようにしてくださいね。
⑤しっかり寝る!
一番大事なのは、良質な睡眠をたっぷりとることです。
若い皆さんはどうしても夜更かしをしたくなるでしょうし、勉学にも励まなくてはならないでしょう。
そして、若いうちは多少無理をしても乗り切れてしまうことがあります。
でも、睡眠はとても大切なのです。
楽器演奏の良し悪しだけではなく、日常のあらゆることに睡眠は影響します。
ですから、普段から睡眠時間とよく眠れる環境をしっかり確保することが大切です。
トランペットでスランプになっている時は、なおさら重要!
調子が悪い、本番が近いという状況ではなかなか眠れないかもしれませんが、睡眠もトレーニングのうちだと思ってしっかり眠るようにしてください。
ちなみに、ショートスリーパーで有名な人物といえばフランスの英雄・ナポレオン。
しかし、最終的には戦いに敗れて配流先で淋しく生涯を終えています。
睡眠時間の短さが影響したかどうかは定かではありませんが、やっぱり寝ることは重要なのではないかと思えますね。
無理をせず、あきらめない!
トランペットで普段より音が出にくい、調子が悪いという時の対策を、ここまでお話ししてきました。
この記事では5つのステップに分けて解説してきましたが、大事なことは「無理をしないこと」「休むこと」です。
焦っていつも以上に練習するといったことをせずに、休みながら少しずつ音を鳴らしていくということを心掛けるなら、必ずしも今回の解説のとおりにする必要はありません。
じっくり、自分のペースでやってみてください。
昔から多くの中学・高校の吹奏楽部がコンクールでの結果を重視してきました。
今でも、是が非でも「コンクールで金賞を取りたい」と願う人が多いのも事実です。
しかし、コンクールのために無理をして、楽器にまつわる思い出が辛い記憶だけになってしまったら、こんなに悲しいことはないと思うのです。
せっかくトランペットというステキな楽器に出会ったのなら、できることなら演奏する喜びを生涯味わっていただきたいと思いますし、私自身、そう考えて今日も楽器を手にしています。
今回の私の話が、皆さんのトランペットライフに少しでも役立てば嬉しいです。